人体頭部と手と携帯端末のシミュレーション

CST MW STUDIO(CST MWS)の時間領域ソルバーは、PBA技術とTST技術を使用することにより、多種多様なアンテナについて非常に精度の高い計算結果を速やかに得られることで定評があります。移動通信端末に使用される小型アンテナも例外ではありません。端末の設計が終了した段階(自由空間での使用を仮定して)の次の段階では、現実的な状況、例えば頭部や電話を持つ手などの周辺環境を含めたテストを行う必要があります。電磁界分布と放射分布は、当然ながら人体頭部と手部の影響を受けると考えられます。さらに、SAR値がIEEE C95.3のような国際標準を満たしていることも明らかにする必要があります。

この事例ではSony Ericsson製の携帯端末について、CAD完全モデルをSTEPファイルとしてCST MWSにインポートし使用します。またSAMファントム頭部と手部もインポートし、図1のようにセットしました。

図 1:携帯端末とSAM頭部および手部
図 1:携帯端末とSAM頭部および手部

離散化に関しては、グローバルメッシュ設定で1波長あたりのメッシュラインを15に設定しました。詳細な構造をしたアンテナ周辺部分については、CST MWSの自動メッシュ生成機能により、細かいメッシュが自動的に生成されます。最終的にメッシュセルの総数は1,100万ほどになりました。シミュレーションに使用したのは2.0GHzプロセッサ搭載の64bit PC、2.5GHzまでの広帯域シミュレーションの所要時間は合計129分でした。メッシュビューを図2に示します。

図2:メッシュビュー
図2:メッシュビュー

脳内組織の誘電率が40と高いため、周囲の空気部分に比べて頭部のメッシュを相当細かくする必要があります。従来の時間領域ソルバーでは細かいメッシュを切ると(必要な部分だけでなく)計算領域の境界まで細かいメッシュが続いてしまいました(図2)が、CST MWSのサブグリッディングスキームではメッシュレベルをソリッドごとに変えることができます。サブグリッドを使用した結果が図3で、メッシュセルの数は450万に削減されています。

図3:サブグリッド使用時のメッシュビュー
図3:サブグリッド使用時のメッシュビュー

計算結果の電磁界分布を図4に示します(1.8GHz)。頭部内部の誘電率が高いため、波長短縮が生じていることが確認できます。放射分布はおおむね頭部に沿って表れています。

図4:1.8 GHz(GSMバンド)の電界分布
図4:1.8 GHz(GSMバンド)の電界分布

図5の遠方界プロットでは、頭部と手の間に主放射方向があることが確認できます。

図5:1.8 GHzの遠方界分布
図5:1.8 GHzの遠方界分布

携帯端末はIEEE C95.3 のSAR標準準拠の認証を受ける必要があります。現状ではSAR値は測定に拠るものでなくてはなりませんが、それでも設計段階でシミュレーションによってこの値を知るのは大変有意義です。近い将来、シミュレーションのみによって認証が受けられるようになるでしょう。1g組織あたりのSAR平均値の分布を図6に示します。

図6:1g平均のSAR(IEEE C95.3標準)の分布
図6:1g平均のSAR(IEEE C95.3標準)の分布

まとめ

CST MWSでは携帯端末の設計と最適化のほかに、頭部と手のある環境でもその特性を確認することができることを示しました。メッシュ数が1,100万を超えるシミュレーションでも2時間強で結果が得られ、時間領域ソルバーのメモリ効率の良さが示されました。しかも1回のシミュレーションで広帯域反射損失と電磁界分布、放射分布、複数の周波数におけるSAR値のすべてが得られます。

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