光領域における金属体と誘電体の近傍界分布をCST MW STUDIO(CST MWS)の周波数領域ソルバーで計算した事例です。以下の考察は文献[1]に基づきます。題材はレーザー照射されるメタルチップです。真空における照射光の波長は810nm(チタニウム・ドープ・サファイアレーザー)です。この周波数では金チップの誘電定数は eps = -24.9 + 1.57iとなります。構造計算は誘電定数1.77の水生環境で行いました。構造モデルはCST MWS内蔵のモデラーで簡単に作成します。
光領域における材質プロパティを、CST MWSではDrude分散材質を用いて定義します。Drude材質パラメータは、誘電定数eps1とeps2から算出するか、または反射インデックスnと吸収係数kからマクロを用いて算出します。マクロのインターフェイスを図1に示します。810nmにおいて、プラズマ周波数と衝突周波数はそれぞれ1.19E16 rad/sと1.41e14 Hzと計算されています。
電場強度1V/mの平面波で照射したチップの近傍界電界成分(絶対値)を図3に示します。上記論文の記載内容の通り、入射電界の偏波がチップの軸に対して平行の場合、電界が強くなります(図3下)。CST MWSで計算された最大値はおよそ75です。一方、軸に対し垂直な偏波の場合は、電界強化はありません。
この局所的な電界強化を利用して、チップの下にある粒子を捕えることができます。誘電体と金属体をチップの下で動かした時の電界の振幅をそれぞれ図4と5に示します。電界の急激な変化を捉えられるようにチップ先端部のメッシュを細分化しており、モデル全体の四面体メッシュの総数は25万以上にも上りました。計算時間は球の各位置ともそれぞれおよそ20分でした。
CST MWSの周波数領域ソルバーによるナノ光学問題の計算を紹介しました。光領域シミュレーションについては、時間領域ソルバーと周波数領域ソルバーを組み合わせることで、より柔軟なシミュレーションが可能となります。上記ではCST MWSのポスト処理機能も併せて示しています。すべてのアニメーション表示は、ポスト処理のテンプレートとマクロを用いて、CST MWSで生成することができます。
[1] L. Novotny, R. X. Bian, X. Sunney Xie, "Theory of Nanometric Optical Tweezers," Physical Review Letters, Vol. 79, No. 4, 28 July 1997.
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