CST MW STUDIO(CST MWS)を使用して無限の誘電半空間と60THz平面波入射をモデリングし、反射と伝送を計算した事例です。この問題には既知の解析解が存在します。シミュレーションにより得られた数値解を解析解で検証することができます。検証後、形状を少し変更して解析解が無い一般的な構造とし、同様のシミュレーションを実行します。
シミュレーションでは周期的境界条件とFloquetポートを使用し、周波数領域ソルバーで計算を行います。無限構造モデルを効率良く計算するために、周期的境界条件は必須の機能です。PML吸収境界条件に代えてFloqetポートを設定することにより、鋭角な入射(グレージング入射)についても正確な結果が得られます。
誘電体の材質は比誘電率2.25のガラスとします。入射波の仰角を変数として0?89.5°の範囲でスイープしました。上記のように、この問題にはFresnel反射/伝送係数と呼ばれる解析解があります。シミュレーションによって反射/伝送係数を求め、解析解と比較しました。図3と4は平行偏波、図5と6は垂直偏波の結果をオーバレイしたプロットです。図には解析解の計算式も表示しています。p>
入射波と伝送電界の振幅のアニメーションを図7に示します(位相軸:pdfでは静止画)。60THz垂直偏波、入射角は45度です。ガラス領域によって伝搬方向が変化し、振幅が低下していることが確認できます。この結果は、上記の伝送係数の計算結果から予測された通りです。
以上でシミュレーション手法を検証することができました。これを踏まえて、同じ手順と技術を使用して、今度は解の無い問題を解きます。ただし空気(すなわち誘電体)の境界に対し上記の反射係数と伝送係数を定義するため、特に接触面が無限プレーンではなく任意形状の場合、Sパラメータに類似した表記形式が便利です。CST MWSにはSパラメータ形式の結果から自動的に反射率や透過率を算出する機能があります。先のシミュレーションでは、このようにして求めた反射率と透過率を簡単なポスト処理で反射係数と伝送係数に変換しました。新たなシミュレーションで使用する形状を図8に示します。誘電体材質はガラスに代えて比誘電率11.56のシリコンを定義します。
励起は先のシミュレーションと同じ方法を用いました。図9と図10は、CST MWSシミュレーションによる2種類の偏波の反射率と伝送率をそれぞれ示します。平坦な接触面の73.6度付近で生じていたブリュースター角が、形状の変更後は抑制されていることが確認できます。
入射角30度、水平偏波の電界振幅の位相アニメーションを図11に示します(pdfでは静止画)。構造表示は3方向を「ridge」に設定し、電界の変化を見易くしています。
まずはお気軽にご相談ください。
解析目的や現在直面している課題などお聞かせください。