コンパクトで高性能な光学システムのなかでも光集積回路は特に関心の集まる分野です。SOI(silicon-on-insulator)導波路は、現在普及している電子回路と互換性を有することから特に熱心に研究され、さまざまな設計案が提示されています。
Foster他の論文(2006)[1]では、二酸化ケイ素(シリカ)基板内部にシリコン導波路を通した光増幅器が示されています。この増幅器の一方の端に(信号より波長の長い)ポンピング波と信号をフィードします。二つの波は内部で四光波混合(互いに異なる周波数をもつ四つの光子による相互作用)により減衰します[2]。位相を入念に整合することにより、ポンピング波が消失し信号が増幅するような相互作用を起こすことができます。このとき帯域外にもう一つの波であるアイドラー波が生じます。
CST MW STUDIO(CST MWS)で作成した上記増幅器のモデルを図1に示します。ケイ素は赤外線スペクトルにあたるおよそ2 x 10-18m2/V2 のX(3)を有する三次の非線形材質です。このモデルでは、導波路のX(3)を100にスケールアップし、増幅器の長さを同じ割合だけ小さくしています。これはシミュレーションの正確さを大きく損なわない範囲で計算負荷を低減する工夫です。
対称条件(electricとmagnetic)を設定すると、問題の複雑度をさらに下げることができます。CST MWSのカスタム信号定義機能を使用してポンピング波と信号波を合わせた入力波をモデリングします。すなわち、周波数領域でそれぞれを表すガウシアン波の和を取り、それを入力波とします。ポンピング波の波長は1.550μm(193.4 THz)、信号波の波長は1.525μm(196.6 THz)です。この波をウェイブガイドポート機能により構造に入力することにより、正しいいモード励起が実現できます(図2参照)。シミュレーションはCST MWSの時間領域ソルバーを使用して行いました。
図3に示すシミュレーションの結果には、増幅の効果とアイドラー波の発生の両方が見られます。ここでの利得は5.2 dBです。なお、ポンピング波は信号波よりはるかに大きいことに注意してください。グラフでは入力ポンピング波の振幅1に正規化して表示しています。
アイドラー波の理論上の周波数は下式で与えられます[1]:
f idler = 2f pump - f signal
その結果、アイドラー波の周波数は190.2 THz、波長は1.576μmとなります。この特性は、シミュレーションによる計算で求めた波長1.576μmと一致します。
増幅の過程を明らかにするために、信号波、ポンピング波、アイドラー波の周波数に電界モニターと電力モニターをそれぞれ定義しました。モニターが記録した結果を図4、5、6に示します。
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