2024年6月14日

ミリ波レーダーの仕組みとは?基本的な原理や構造について

ミリ波レーダーの仕組みとは?基本的な原理や構造について

航空機や船舶、産業機械、医療機器といったあらゆる分野で、性能や品質の向上に役立てられているミリ波レーダー。近年では自動車の自動運転システムや高齢者の見守りシステムなどにも採用され、私たちの暮らしをより安全に、より快適なものにしてくれています。

今回は、そんなミリ波レーダーの基本的な仕組みについて、原理や構造、検出方法などを解説しています。前半ではミリ波レーダーの特徴についてもご紹介していますので、参考にご覧ください。

ミリ波レーダーとは

ミリ波とは波長が1mm〜10mmの間、周波数帯が30GHz〜300GHzの間に分類される電波の周波数帯で、ミリ波レーダーとは測定の為に発射する電波がミリ波帯のものを指します。

またミリ波レーダーは60GHz帯・76Ghz帯・79Ghz帯に区分けされており、例えば自動運転システムでは長距離の検知を得意とする76GHz帯のミリ波レーダーが多く使用されていますが、今後はより大容量で高速通信が可能な79GHz帯を車載するために整備が進んでいます。

参考:周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴|電波利用ホームページ(総務省)

ミリ波レーダーの特徴

ミリ波レーダーの特徴は、指向性が非常に高く、伝送できる情報量が多いという点です。

「指向性が高い」状態とは、レーダーの照射角度が狭まり、向かう方向に対しての直進性が強い状態を指します。電波は周波数が高くなればなるほど指向性を持つようになり、ミリ波のような高周波帯はその性質が強くなるのです。

指向性が高いと、特定の範囲に絞ってレーダーを照射することができるので、他の電波と混信しにくく、また干渉を起こしにくいという特性が現れます。

そのため、もともとミリ波レーダーは軍事用レーダーや衛星通信などでの使用に限定されていたのですが、近年ではこの特性を活かして、自動運転システムや医療機器などにも採用されています。

また伝送できる情報量が多いのは、ミリ波の帯域幅が広く規定されているからです。

電波の通る道はしばしば道路に例えられるのですが、車線が少ないほど一度に通行できる車両の数は少なくなり、反対に車線が多いほど増えます。ミリ波の帯域幅(特に79GHz帯)は他の周波数帯と比べて広いため、一度に伝送できる情報量が増えるのです。

さらに、電波は帯域幅が広いほど速度が上がる性質を持つので、例えば5G通信のような次世代通信技術にもミリ波帯が使われています。

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ミリ波レーダーの構造と仕組み

ミリ波レーダーの構造と仕組み

次に、ミリ波レーダーの原理や構造、検出方法、物体の位置情報などから情報を算出する仕組みについて見ていきましょう。

ミリ波レーダーの原理について

ミリ波レーダーの原理は、「やまびこ」に似ています。

やまびこは山に向かって大声で叫ぶとその声が山に反射して自分の元へ戻ってくる現象ですが、レーダーもこれと同じで、レーダーから対象物に対して電波を発射し、対象物に反射して戻ってきた電波(反射波)から、対象物の位置情報などを測定します。そして、このような電波のやまびこ現象を「センシング技術」と呼んでいます。

レーダーにはミリ波レーダーやマイクロ波レーダー、赤外線レーダー(赤外線センサー)など様々な種類がありますが、原理は全て同じです。

ミリ波レーダーシステムの構造

ミリ波レーダーシステムの構造は、送信するミリ波帯の電波(送信波)を生成する「シンセサイザ」、送信波を発射する「Txアンテナ(Transmitter/送信機)」、反射波を受信する「Rxアンテナ(Receiver/受信機)」、計算処理を行う「DSP(デジタル信号処理装置)」で成り立っています。

【レーダーモジュールの基本構造】

  • シンセサイザ
  • Txアンテナ(Transmitter/送信機)
  • Rxアンテナ(Receiver/受信機)
  • DSP(デジタル信号処理装置)

ミリ波レーダーの検出方式

ミリ波レーダーは、距離や速度、角度などを検出することが可能ですが、これらの検出方式にはFMCW方式やパルス方式などがあります。

前者のFMCW方式は、連続波(CW)の周波数を変化(FM)させて一定期間発射し、送信波と反射波の周波数の差から対象物との距離や速度を求める方式です。壁に向かって連続してボールを投げ、今から投げようとするボールと、戻ってきた時のボールの順番差で計算するイメージです。

また、時間とともに周波数が変調する信号をチャープ信号やチャープ波といい、FMCW方式はこのチャープ信号を使用するのが特徴です。

後者のパルス方式は、極めて短い送信信号(パルス波)を発射し、反射波を受信するまでの往復時間から対象物との距離などを求める方式です。壁に向かってボールを一度だけ投げ、戻ってくる時間差で計算するイメージです。

自動運転システムで使用されているミリ波レーダーは前者のFMCW方式が採用されており、対して後者のパルス方式は主に船舶や航空機などで採用されています。

参考:【PDF】情報通信審議会 情報通信技術分科会 移動通信システム委員会 報告|総務省

ミリ波レーダーの仕組み

ミリ波レーダーの仕組みについて、ここではFMCW方式の大まかな流れを見ていきましょう。

はじめにシンセサイザにて送信波となるミリ波帯域のチャープ信号を生成します。次に生成された送信波をTxアンテナから対象物に対して連続して放射し、対象物にぶつかって戻ってきた反射波をRxアンテナで受信します。そして、ADコンバーターにてデジタル信号へと処理した後、DSPにて演算処理を行い、対象物との距離・速度・角度・位置などを求めます。

さらに、移動する物体の動きや速度を計算するには、ドップラー偏移の測定も重要な役割を果たします。FMCW方式ではドップラー周波数(Doppler Frequency Shift/レーダーや対象物が移動しているときに生じる周波数)の変化を求め、これによって物体が移動しているか、またどのように移動しているのかを測定することができます。

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