衛星通信の課題まとめ｜克服するための対応もあわせて説明

衛星通信は近年めざましい技術発展を見せていますが、いくつかの課題も存在します。今回は、そんな課題について詳しく解説。加えて、これから取り組むべき対策についても説明していきます。衛星通信に関する情報が知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

衛星通信の基礎知識

まずは、衛星通信はどのようなものなのかについて、基礎的な情報を説明します。

衛星通信の用語

衛星通信は、「人工衛星を使ってデータ通信を行う方式」のことです。地上にアンテナを設置することで通信を行い、インターネットや電話などの関連サービスを提供しています。そのため、世界中においてその存在感は日々増していると言っていいでしょう。

そんな衛星通信は「静止衛星」と「周回衛星」という2つの種類に分かれており、それぞれに特徴があります。

静止衛星：赤道上空約36,000kmの位置にある。人工衛星1機の対応範囲が広いので、衛星の総数が抑えられる。
周回衛星：静止衛星と違う軌道にあり、一般的に地上からの距離が近い。人工衛星1機の対応範囲が狭く、衛星の総数が何千個～何万個にのぼることもある。

衛星通信の用語や種類については、下記の記事でさらに細かく説明しています。
関連記事：衛星通信の種類｜「静止衛星」と「周回衛星」の相違点は？

衛星通信の特色

衛星通信には、さまざまな特色があります。とくに重要視されるのは、「場所を問わずに情報通信ができる」ということでしょう。これによって海上や空上でのデータ通信も可能になり、サービスの幅が広がっていきます。

また、「災害が発生しても情報のやり取りが実現できること」「画像や映像なども取り扱えること」なども特筆すべき特色の1つです。

衛星通信が抱える課題

ここからは、衛星通信が持つ課題を5つピックアップして解説します。

①遅延が発生しやすい

まず、衛星通信は遅延が生じやすいといわれています。その理由は、人工衛星と地上の間に大きな距離があるからです。よって、緊急性が高いサービスを導入する場合は、衛星通信よりも高速の通信が可能な方式を選ぶといいでしょう。

②設備の設置に手間がかかる

衛星通信を実施する際は、基本的にアンテナを地上に設置しなければならないので、準備に手間と時間がかかります。それだけでなく、適切な場所（障害物がないなど）に設置するための配慮も必要です。よって、利用者からすると煩わしさを感じるかもしれません。

③スペースデブリ問題が発生する

寿命を終えた人工衛星などが宇宙のごみとなって多くの問題点を引き起こすことを、スペースデブリ問題と呼びます。スペースデブリと人工衛星の衝突事故や、スペースデブリ同士がぶつかって新しいごみを増やしてしまう事故などがスペースデブリ問題の例として考えられるでしょう。

安全な宇宙利用を推進するためにも、スペースデブリ問題への迅速な対策が必要です。

④光害のおそれがある

光害（ひかりがい）は、光が巻き起こすさまざまな問題によって悪影響が出ている状態のことです。そんな中でも衛星通信の場合は、天文観測の際に人工衛星の光が入り込んでしまう光害が特に問題視されています。これは天文観測データを使った研究の進行を妨げてしまうため、このまま問題を放置しておくことは難しいでしょう。

⑤天候に左右されやすい

衛星通信は、天候の影響で通信環境が左右されることがあります。なぜなら、雨などによって電波が弱まってしまうことがあるからです。結果的に衛星放送が映りにくくなったり、インターネットの速度が遅くなったりするという悪影響があります。そのため、通信環境が常に安定しているわけではないことを理解しておきましょう。

課題を踏まえて衛星通信が今後取り組むべき対応

衛星通信が持つ課題を克服するためには、これからどのような対策が必要なのでしょうか。ここでは、特に対応しやすいと思われる対策方法を3つ取り上げます。

①遅延が起こりにくい環境の形成

まず、できる限りスピーディーなデータ通信ができるように、衛星通信の技術を高めなければなりません。たとえば複数の人工衛星を連携運用する「衛星コンステレーション」は、遅延が起こりにくいシステムとして注目されています。このような新しい技術をさらに発展させ、遅延が発生しにくい環境を作っていく姿勢が求められるでしょう。

衛星コンステレーションについてさらに詳しい情報が知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

関連記事：衛星コンステレーションとは？用語や歴史について解説
関連記事：衛星コンステレーションの仕組みは？長所・短所、トレンドのポイントも

②アンテナのブラッシュアップ

衛星通信で使用するアンテナを改良することで、衛星通信を導入する利用者もさらに増えていくと考えられます。より簡単にアンテナが設置できるようになれば、衛星通信が「気軽に取り入れやすい通信方式」であるとして認識が変わっていくでしょう。衛星通信の利用者が多くなることによって、宇宙ビジネス全体の振興にもつながっていきます。

③スペースデブリ問題への対応

スペースデブリ問題をこれ以上拡大させないために、ルールやガイドラインの普及が求められます。というのも、人工衛星の扱いなどにまつわる明確な規定が広まれば、世界で連携して問題解決を目指すことができるからです。これらに加えて、具体的にどのような問題が起こっているのか1人ひとりがよく考え、現状を把握することも大切になってきます。

衛星通信技術には専門知識が必須

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