2025年5月16日(金)、東京コンファレンスセンター・品川にてCST Studio Suite Tech Seminar 2025を開催しました。
今回のセミナーには100社14大学209名の方にご参加いただきました。
ご参加いただいた皆様には、心から感謝申し上げます。
CST Studio Suiteに関する技術的な情報収集の場として、そしてユーザー様同士の交流の場としても活用いただきたいという思いのもと開催している本セミナー。会場写真を交えて当日の様子をご紹介いたします。
CST Studio Suite Tech Seminar 2025では、テクノロジーの未来を見据えた基調講演、CST Studio Suiteユーザー様による解析事例の紹介、そしてAETによる技術トピックスなど17の講演を行いました。
オープンスペースではCSTに関連した研究・開発ソリューションを提供する企業の展示に加え、アカデミックユーザーの皆様によるポスターセッションも開催。
さらに、ユーザー様の日々の疑問を解決できる場として毎回ご好評をいただいているCST Studio Suiteのサポートセンターも設置し、セミナー後の懇親会も大変盛況で、充実した1日を終えました。
基調講演では、東北大学 大学院工学研究科 ロボティクス専攻 教授の金森 義明様に「メタマテリアルとメタサーフェスによる6G・テラヘルツ波デバイスの進化」を大ホールにて発表いただきました。
本セミナーでは、幅広い分野のユーザー様が抱える技術課題に寄り添い、解決のヒントとなるような有益な情報を提供しております。
各講演の開始時刻には多くの参加者の皆様が会場に集まり、最新技術の知識や情報収集への熱意を感じる1日となりました。
2020年代に移動通信システムが4Gから5Gへと進化を遂げたところですが、2030年代には6Gの実用化が計画されています。6Gではこれまでの周波数帯域よりはるかに高いテラヘルツ波の利用を見込んでおり、新たなデバイスや材料の開発が課題です。
本講演では、自然界には見られない特性を持った人工的材料である「メタマテリアル」や「メタサーフェス」が、電磁波を自在に制御できる革新的技術であることを、金森様のグループが開発したデバイスの事例をもとに解説いただきました。
一方、研究開発でのシミュレーションの活用について、現象の理解をはじめ特性予測、デバイス設計、実験の妥当性検証などに不可欠であり、モノづくりとの両輪で進めていくことが重要であると強調されていました。また、昨今は研究のさらなる加速が求められるなか、ツールベンダーへの要望としてサポート体制の充実を挙げていました。
さらに、メタマテリアルの社会実装を目的として産学連携によるサプライチェーン構築を目指した研究開発拠点「Meta-RIC®」もご紹介いただきました。国内初となるメタマテリアル専門の研究開発センターとして、2025年4月現在で19社がコンソーシアムに参加しており、現在も広く参加企業を募っているとのことです。
電気駆動製品の開発に関わるエンジニア向け統合プラットフォーム「Manatee」と、無線周波数(RF)回路やシステムの測定・モデリング・シミュレーションを統合的に行う「IVCAD Suite」についてご説明いただきました。
この他、ノンパラメトリック最適化ツール「Tosca」や、ダッソー・システムズのSIMULIAブランドにおける電磁界シミュレーション技術(EMAG)のロードマップについてもご紹介いただきました。
電磁界シミュレーションを活用したアンテナのエリア評価の事例として、メルボルンにある212m×270m のスポーツスタジアム(収容人数4万2,000人)を対象とした研究内容についてお話しいただきました。
アンテナ単体の解析は CST の T-Solver を活用し、スタジアムにおけるエリア評価は A-solver を活用され、アンテナのビーム方向を「スタジアムの中心に向かせた場合」、「観客席に向かせた場合」のカバレッジの違いや、解析の結果として30度平面アンテナがもっともSINR(信号対干渉雑音比)が優れていたこと、観客がスタジアムに居る場合を想定した SINR の変化などについて発表されるなどスケールの大きい講演となりました。
プロトンビームを照射して、切らずにがんを治療できる陽子線がん治療装置。その内部にあるキャビティーの開発にあたり、CST Studio Suiteを使用した際のプロセスや、モデルと実機との比較についてご紹介いただきました。
その結果、サイクロトロンを用いた陽子線がん治療装置で世界最高の省エネとなる消費電力70kW程度のキャビティーが完成。共振周波数の誤差も非常に小さく設計変更をせずに開発できたことをお話しいただきました。
CAEによる完全場均質化法を電磁場解析に適用することで、電磁材料の変化の影響や材料内部に伝播する電磁場の可視化に成功した取り組みをご紹介いただきました。
1辺500μmのキューブ型ミクロモデルで構成される樹脂中の炭素繊維の繊維長、配向、含有率が異なる10のケースを検討し、標準ケースとの比較数値を算定できたこと、解析結果の整合性がある程度取れていることが確認できました。さらに今後は精度を高めて新材料の設計に活用していくことなどをお話しいただきました。
テレコム・データコム市場における光通信のデータレートが224GPAM4となり超高速化が進んでおり、コネクタ製品の評価基板の開発が極めて重要であると教えていただきました。
表面接触型の同軸コネクタや、ビアのバックドリル加工を含む内層配線の伝送路を採用するなど、プリント基板伝送路の限界とも言える~80GHzまで共振のない評価基板には目を見張るものがあり、それにはCSTを用いた設計検証が極めて有効であるとのうれしいお言葉を頂きました。
EMC対策に用いられるフェライトコアや、トロイダルコイルのシミュレーションと実測の整合性を高めるための具体的な手法をご紹介いただきました。
Sパラメータから磁性体の電気的物性値を算出するといったこれまでにないアプローチ方法、また成功事例と失敗事例を交えながら、シミュレーションにおけるポイント「メッシュ設定」「サンプリング設定」を具体的に解説いただき、非常に参考となるご講演でした。
ダッソー・システムズが提案するMODSIM(モデリング&シミュレーション)では、要件定義から設計・解析までのプロセスをシームレスに統合することで、製品開発の迅速化、品質向上を図ります。MODSIMが3DEXPERIENCE platform上で具体的にどのように実現されるのかを、コネクタ設計プロセスを例にご紹介いただきました。
弊社技術部では、CST Studio Suiteに関する幅広い分野での技術トピックスや、シミュレーションの現場で役立つヒントについて9つの講演を行いました。
企業展示ブースでは、株式会社パナソニックシステムネットワークス開発研究所、HPCシステムズ株式会社、株式会社e・オータマ、GDEPソリューションズ株式会社の皆様にご出展をいただき、CSTを活用した研究・開発に必要なソリューションに関する展示をしていただきました。弊社も展示を行いました。
6G時代に対応する開発環境として、330GHzまでのミリ波・マイクロ波における測定・評価サービスをご紹介いただきました。横浜市にある大型電波暗室は6面電波吸収体暗室で、様々な計測器とともに測定環境をご提供することで、アンテナ性能測定やOTA測定、材料評価といった幅広いご要望に対応しています。
こうした測定環境と専門家チームのノウハウを活かし、測定結果の解釈や改善提案までを含めたコンサルティングサービスについてご紹介いただきました。
GPUの高速演算力を数値解析に応用する技術に着目し、電磁界シミュレーションの計算速度比較をベンチマークで発表。CPUに比べ、もっとも性能の高い構成の場合で約13.5倍の高速化が見られたとご説明いただきました。
この他、NVIDIA® GPUを2CPUで4基搭載可能な、Deep Learning(深層学習)向けハイエンドGPUワークステーション「HPC5000-XSRGPU4TS」もご紹介いただきました。
EMC試験のテストラボを主力業務とする株式会社e・オータマ。電磁波調査・対策を行う4カ所の試験所をご紹介いただきました。これらの試験所では車載や防衛、測定器などお客様の製品カテゴリーに合わせて試験所を選び、暗室やシールドルームなどの試験設備をお貸しして同社のエンジニアが測定を行います。
「実測をしたいお客様がほとんど」とのことでしたが、ノイズ対策や規格解釈の疑問などの課題をお持ちのお客様には、各試験を網羅する専門コンサルタントがサポートを行っているとご説明いただきました。
ハイエンドGPUのワークステーションはGPUの進化とともに性能が向上する一方、動作音が静かなオフィス環境を損ない、従業員にストレスを与えることがあります。また、電力消費や排熱量も増加するためオフィスのトータルコストに影響を及ぼすことも考えられます。
その課題解決に、水冷にすることで優れた静音性を実現する「液冷GPU搭載ワークステーション」や初期投資コストを抑える「GPUレンタルサービス」をご紹介いただきました。
ワイヤレス機器や高速デジタル機器の電気設計において、材料パラメータとして誘電率を高い精度で測ることが求められています。今回はCSTによる正確なシミュレーションの実現にも有用なAETの「誘電率測定システム」の展示と、誘電率測定についてのご相談を承りました。
また、VHF~ミリ波帯における人体への電気的特性を測定できる、筋肉や脂肪など人体の組織を模したブロック「人体ファントム」も展示しました。
ポスターセッションでは、CST Studio Suiteを活用した研究を行うアカデミックユーザーの皆様に、それぞれの分野における研究と成果についてご紹介いただきました。
電磁界結合型マイクロ波加熱装置、軌道角運動量モードを用いた放射型均一マイクロ波加熱装置を紹介。電子レンジの加熱ムラに見られるような金属筐体の加熱の非均一に対し、広範囲で均一電力照射を実現する開放的なマイクロ波加熱装置の研究について発表されました。
MF帯における生体組織の比誘電率・導電率を推定する手法を提案。測定プローブを使用し豚の肝臓を焼灼する測定を行ったところ、「マイクロ波帯の電磁波よりも300kHz(MF帯)の電磁波で数値が大きく変わった」とお話しいただきました。
腎動脈周辺の神経を焼灼する高血圧治療(RDN)などへの応用が期待されます。
20Kまで冷却すると金属の伸縮が鈍くなる特性により、低電力・低損失な電子銃の開発を目指した研究を紹介。CST Studio SuiteやGPTなどを使用してキャビティーやカプラーの計算を行い、基礎測定で計算通りの結果が得られたことなどをお話しいただきました。
粒子加速器に関する様々な研究を行う同研究室からは、ECRイオン源のシミュレーションについて紹介いただきました。大容量のHeイオンビームを生成するコンパクトなイオン源の開発で重要となる、磁場分布の詳細な解析データをご説明くださいました。
5G通信用のマルチオペレーション、mmWaveマイクロストリップパッチアレイアンテナを提案。基板にFR4とRogers RT/Duroid 5880を用いた2種類のアンテナがそれぞれに異なる共振周波数で動作すること、設計とシミュレーションにCST Studio Suiteを使用したことなどが発表されました。
自動車への落雷に伴う電気電子機器への被害対策として、落雷による車両内部の電流経路を明らかにする試験を実施。実車とCST Studio Suiteにて構築した解析モデルによる試験により、結果として駆動系や電気電子機器が集中する前輪周囲に電流の8割が集中したことなどをご説明いただきました。
CST Studio Suiteのユーザー様がお持ちの疑問に、弊社担当者が一緒に画面を見ながらお答えするサポートセンター。開会早々からご予約を多数いただき、皆様の熱気を感じました。
ご利用された方からは、さまざまなご質問をいただき、「詳しく教えてもらえてよかった」とうれしいお言葉もいただきました。
講演終了後は、ユーザー会恒例の懇親会を開催。親睦の場として会場のあちらこちらで名刺交換やご歓談が行われ、終始和やかな雰囲気となっていました。
懇親会はアットホームな雰囲気を心掛け、お一人の参加でも楽しめるよう工夫しております。
ユーザー様同士の交流や講演者への質問の機会として、さまざまなコミュニケーションにご活用いただきました。
本セミナーにご参加いただきました100社14大学209名の皆様、誠にありがとうございました。
参加者様の声を一部ご紹介いたします。
『貴重な機会をありがとうございます。今後も定期開催していただき、こういったユーザー事例をたくさん知れる機会がさらに増えると嬉しいです。』
『使えていない機能があることが改めてわかり、勉強になりました。』
『ポスターセッションでは、様々な分野の方と議論させていただき、有意義な時間となりました。』
温かい声をありがとうございました。
参加者様の声を励みに、次回も技術的かつユーザー様同士の交流にも役立つイベントを企画したいと考えております。
内容が決まりましたら、改めてご案内いたします。
AETは製品やプラットフォームの提供だけにとどまらず、「お客様の期待を超えるご提案を目指して」をモットーに、ユーザー様の技術課題に寄り添い、解決に向けて伴走いたします。
導入や最適化のご相談はもちろん、各々の状況に応じた柔軟な提案やサポートコミュニティなどを提供しております。
CST Studio Suiteに関するお問合せは、こちらのフォームもしくは044-980-0505までお電話ください。
まずはお気軽にご相談ください。
解析目的や現在直面している課題などお聞かせください。