2024年1月30日

EMI対策とは何か?電磁ノイズの基礎知識から対策手法について

EMI対策とは何か?電磁ノイズの基礎知識から対策手法について

昨今、IoT化やDXの需要が高まっていますが、その中で電気・電子機器から発生する電磁ノイズによる機器の故障や通信障害が問題視されています。

今回は、そんな電磁ノイズへの対策(EMI対策)について、電磁妨害(EMI)とは何かという基礎知識から、EMI対策の概念、基本手法についてご紹介します。

EMI対策とは?EMIの基礎知識

EMI対策とは?EMIの基礎知識

最初に、EMI(エミッション)やEMI対策の概念、EMS・EMCとの違いについて見ていきましょう。

EMI(エミッション)とは

EMI(エミッション)とは電磁波や電磁界が周囲の電気・電子機器及び電子部品に干渉する現象を意味し、日本語では「電磁妨害」「電磁干渉」「電磁障害」といった言葉で表現されます。また、他の製品に影響を与えるこのような電磁波は「ノイズ」と呼ばれています。

例えば、パソコンで使用するマウスをワイヤレスに変えたところ反応が悪くなってしまったり、ワイヤレスイヤホンを使用していると音が途切れてしまったりといった状況は、パソコンなどの周辺にある機器が発するノイズが干渉していると考えられます。

このような影響を出さないようにするため、製品開発においてはノイズを発生させない対策(EMI対策)が求められます。

関連記事:EMI(エミッション)とは?基本知識や対策の必要性について

EMI対策とは

電気・電子機器から発生するノイズが周辺にある他の機器に干渉したり、機器内の部品同士で干渉しないように対策することをEMI対策といい、EMI対策の目的は、先ほどご紹介したように機器の不具合や誤作動を抑制することに加えて、人体へ影響を与えないようにすることも挙げられます。

そもそもノイズによる干渉がどのような状況で発生するのかというと、例えば、テレビのリモコンや無線LANルーターのように製品を使用する際に意図的に電磁波を放出する必要があって、その必要な電磁波がノイズになるケースや、電子レンジやパソコンのように製品を使用する際に機器から電磁波が漏れてしまうケース、洗濯機や冷蔵庫のように副次的に電磁波が放射されてしまうケースがあります。

EMI対策ではノイズを極力出さないことが主旨となりますが、ノイズ軽減のために必要な電磁波まで抑制してしまっては本末転倒ですし、電磁波は目で見ることができないため、必要な電磁波と不要なノイズを選り分けることや、ノイズの発生源や伝達経路を把握することも非常に難しいのです。

EMS(イミュニティ)との違い

「EMS(イミュニティ)」とは、他の電子機器や電子部品が発するノイズに対する耐性のことで、日本語では「電磁感受性」と言われています。

例えば、パソコンとワイヤレスマウスを使ってノイズによる干渉が発生した場合、パソコンがワイヤレスマウスに与える影響をEMI、ワイヤレスマウスがパソコンから受ける影響をEMSで表現します。

製品開発においては、ノイズを発生させないEMI対策だけでなく、ノイズの影響を最小限に抑えるEMS対策も求められるのです。

EMCとの違い

ご紹介しているように、電気・電子機器を安全かつ安定的に使用するには、加害者側の対策と、被害者側の対策の両方が必要であり、市場で販売する製品はその両方の能力を持つ必要があります。

このような影響を与える電磁波を最小限に抑えること(EMI対策)と、ノイズの影響を最小限に抑えること(EMS対策)、この2つの能力を同時に持ち合わせることを「EMC」や「電磁両立性」といいます。

また、EMI対策とEMS対策を包括して、EMC対策やノイズ対策と呼んでいます。

なお、電気・電子機器を市場で販売するにはEMC規格(EMI規格・EMS規格)に適合しなければなりません。EMC規格には国や地域ごとに国際規格や国内規格が定められており、これらの規格に適合することをEMC試験(EMI試験・EMS試験)にて証明する必要があります。

関連記事:EMC・EMI・EMSの違いについて|基本知識や対策の相違点

EMI対策のポイント

EMI対策では、電磁ノイズが発生する原因と、ノイズの伝達経路を分けて考えることが基本となります。それぞれの考えについて見ていきましょう。

EMI対策のポイント①:電磁ノイズが発生する原因

電磁ノイズが発生する原因は様々ですが、製品開発においては、電気・電子機器を使用することによって機器及び機器内部で発生するケースと、電線や通信ケーブルに電流が流れることで生成される電磁場から発生するケースの2パターンが一般的です。加えて、落雷による雷放電も電磁ノイズの発生源となります。

また、ノイズの発生源となる信号は電圧や電流の変動を通じて成立していますが、この信号に含まれる周波数が高いほど、ノイズが大きくなる傾向にあります。

EMI対策のポイント②:電磁ノイズの伝達経路について

ノイズは伝達経路によって下記の3つの種類に分類されます。

  • 伝導ノイズ:
    電気・電子機器や電子部品から発生したノイズが、基板配線やケーブルなどのラインを経由して伝わるノイズ
  • 放射ノイズ:
    電気・電子機器や電子部品から発生したノイズが、空間を経由して伝わるノイズ
  • 誘導ノイズ:
    ノイズが流れている基板配線などのラインが他のラインと電磁誘導・静電誘導を起こし、これによって発生するノイズ

このうち伝導ノイズは信号の伝わり方によって、ノーマルモードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)と、コモンモードノイズの2つに分けられます。

EMI対策の手法について

EMI対策の手法について

電気・電子機器及び電子部品の開発における一般的なEMI対策の手法として、グランド対策・フィルタ対策・シールド対策の3つが挙げられます。

EMI対策の手法①:グランド対策

グランド対策とは、電気・電子機器内の回路や筐体を大地に接続することで、基準電位の安定化を目指す対策です。「グランド」や「グランディング」と表現されます。

またグランド対策には、シグナルグランドとフレームグランドという2つの概念があります。

シグナルグランドにおけるノイズはリターン電流による電位変動が主な原因で、伝達経路を短くすることでインダクタンスの最小化を狙います。

一方、フレームグランドにおけるノイズはフレーム間で発生する電位差が主な原因で、金属板同士を低い電気抵抗で接続することが重要なポイントとなります。

EMI対策の手法②:フィルタ対策

フィルタ対策とは、電源ラインなどにフィルタを組み込むことで、不要なノイズだけを抑制する手法です。

フィルタには周波数の特性によって、ローパスフィルタ・ハイパスフィルタ・バンドパスフィルタ・ノッチフィルタの4つの種類に分類されます。ノイズ対策は一般的に高周波で発生することが多いため、高い周波数を取り除くローパスフィルタを利用するのが通常です。

フィルタ対策はノイズそのものの発生を抑制する役割はないものの、ノイズ障害が大幅に低減できる有効な手法となっています。

EMI対策の手法③:シールド対策

シールド対策とは、ノイズ源やノイズ対策が必要な機器を金属導体で覆うことで、ノイズによる障害を防ぐ手法です。シールド対策は、部品やプリント基板、ケーブル、また機器全体に対して、対策する箇所に応じたシールド部品及び筐体を用います。

フィルタ対策と同様に、シールド対策にはノイズそのものを軽減する働きはありませんが、不要なノイズ放射を低減することができます。

「CST Studio Suite」で試作レスの開発を

今回は、EMI対策に関する概念についてご紹介しました。

EMIについては、回路設計や筐体設計の段階で電磁界シミュレーターを用いることにより事前検討が可能で、試作レスとなり設計開発コストを節約することが可能です。

本サイトでは、今回ご紹介した事例以外にも電磁界解析ソフトウェア「 CST Studio Suite」を使用したシミュレーション事例を多数掲載していますので、ぜひ参考にご覧ください。

株式会社エーイーティーは、30年以上にわたる「 CST Studio Suite」の豊富な実績と経験に基づき、研究・開発業務の立ち上げから運用フローの構築まで、ユーザー様に対して多岐にわたるサポートを提供しています。

導入をご検討中の方に向けて、30日間無料トライアルや簡易版ライセンスのご案内、セミナー動画やイベントを随時開催していますので、お気軽にご利用ください。

電磁波技術のプロフェッショナル 株式会社エーイーティー

株式会社エーイーティーは、電磁波技術をコアとしたスタンフォード大学発のベンチャー企業として、1988年に誕生しました。

先端の解析ソフトウェア製品を中心に、誘電率測定装置をはじめ、小型プラズマ装置、人体電磁波ファントムなど付加価値の高いハードウェア製品をご提供し、また産官学連携プロジェクトを含む研究開発を通じてお客様のご要望にお応えしてまいりました。

当社の持つ高度な専門知識と技術力、幅広いネットワーク、そして独創的な発想力を武器に、価値あるソリューションをご提案致します。

CST Studio Suiteの導入に関するお困りごとやご質問等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

メール、お電話でのお問合せ

お電話でも承ります。お気軽にご連絡ください。

TEL044-980-0505

平日 09:00~18:00

会社名
株式会社エーイーティー
所在地
〒215-0033
神奈川県川崎市麻生区栗木2丁目7番6号
TEL:044-980-0505(代表)
CST Studio Suiteは ダッソー・システムズの製品です。ダッソー・システムズについては

ダッソー・システムズ株式会社はフランスに本社を置くソフトウェア開発企業です。
CAD CAM PDM PLM シミュレーションを始めとする卓越した3DEXPERIENCEを通じてお客様の3次元設計・エンジニアリング・3次元CAD・モデリング・シミュレーション・データ管理・工程管理を強力に支援します。

CST Studio Suiteは ダッソー・システムズのシミュレーションソリューションブランド SIMULIAの製品です。

 sample