今回は、電子機器等の静電気に関するルール「ESD規格」について、基本的な概要やESD試験、ESD対策について解説しています。また、電磁界解析ソフトウェアを使用したESD解析事例についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
ESD規格とは電気を使用した製品や機器の信頼性と性能を確保するためのルールで、ESD(静電気放電)に関する標準的な基準とガイドラインが提供されています。
ここでは、ESD規格の概要や目的、ESD試験について見ていきましょう。
ESD規格は、主に電子機器や半導体デバイス等で発生するESD(静電気放電)の管理に関する規格の総称です。
ESD(静電気放電)とは、いわゆる静電気がバチッと流れる現象のことで、例えば、身体に電気が溜まった状態でセーターを脱ぎ着する際や、ドアノブに触れる際等、私たちの暮らしの中でもよく見られる現象です。このような何気ない日常の中では不快感に留まる程度の影響ですが、帯電した状態で精密機器に触れてしまうと損傷や劣化等に繋がる恐れがあるため、電子機器や電子部品を扱う現場では慎重な管理が求められます。
特に可燃性のガスや液体等を扱う場面では、ESDによって発火や爆発を引き起こす可能性もあるため、製品開発において重要な課題の一つとなっています。
ESD規格への適合を証明する試験をESD試験といい、発生する静電気放電に模した波形をEUT(供試機器)に与え、破損や誤動作等が起こらないか、その影響を評価します。
ESD試験の方法に関してもESD規格で定められており(IEC61000-4-2等)、一般的にはガンタイプの試験機にて行われ、規定の電圧範囲で評価が行われます。
ESD規格は工業規格に含まれるものであり、ESD規格を含む主な工業規格として、国際規格のIEC規格、日本の国内規格であるJIS規格及びRCJS規格、米国規格のANSI規格及びMIL規格が挙げられます。
これらの規格は製品が出回る市場に合わせて調整されているものの、目的や内容について大きな違いはありません。
国際規格 | IEC規格 |
---|---|
国内規格(日本) | JIS規格/RCJS規格 |
米国規格 | ANSI規格/MIL規格 |
なお、日本の国内規格であるJISは国際規格であるIEC規格を基に翻訳された規格であり、日本の環境に適した形で、具体的な管理・運用方法を定めた規格がRCJSとなっています。
ESD試験では、主に「HBM(人体モデル)」「MM(マシンモデル)」「CDM(デバイス帯電モデル」の3つの試験方法があります。
HBM(人体モデル/Human Body Model)とは、人体に蓄積した静電気が原因で発生する静電気放電を評価するESD試験モデルです。
機器等がESD破損する主な原因は人体、特に指先であるため、このHBMは最も一般的なESD試験方法となっています。
MM(マシンモデル/Machine Model)は、金属工具や装置等の誘導体に蓄積した静電気が原因で発生する静電気放電を想定したESD試験モデルです。
CDM(デバイス帯電モデル/Charged Device Model)とは、デバイスに蓄積した静電気が原因で発生する静電気放電を評価する試験モデルです。
主に製品生産時におけるESDを評価するもので、搬送レーン等での摩擦によって帯電したデバイスが誘導体に近づくことで静電気放電が発生し、それによって回路や素子が破壊されるのを防ぐための試験を想定しています。
下記の一覧は主なESD規格であるIEC規格と、それに対応するJIS規格です。ESD規格は静電気放電に関する基礎と測定方法、デバイス試験、特定応用のパートから構成されています。
また、「TR」という頭文字は「Technical Reports」の略称で、標準報告書を意味します。
なお、IEC規格・JIS規格の最新情報及び購入は下記のリンクよりご確認をお願 い致します。
JSA GROUP Webdesk|日本規格協会のWeb販売サイト
IEC規格番号 | 対応するJIS規格番号 | 概要 |
---|---|---|
IEC/TR 61340-1 | 静電気放電現象の基礎 |
IEC規格番号 | 対応するJIS規格番号 | 概要 |
---|---|---|
IEC 61340-2-1 Ed.2 | JIS C 61340-2-1: 2006 | 電荷拡散性能の測定方法 |
IEC/TR 61340-2-2 | TR C 0036:2004 | 帯電性の測定方法 |
IEC 61340-2-3 Ed.2 | JIS C 2170:2004 | 抵抗及び抵抗率測定方法 |
IEC規格番号 | 対応するJIS規格番号 | 概要 |
---|---|---|
IEC 61340-3-1 | JIS C 61340-3-1 | HBMシミュレーション試験の波形 |
IEC 61340-3-2 | JIS C 61340-3-2 | MMシミュレーション試験の波形 |
IEC規格番号 | 対応するJIS規格番号 | 概要 |
---|---|---|
IEC 61340-4-1 Ed.2.1 | JIS C 61340-4-1:2008 | 床被覆材/施工床の特性 |
IEC TS 6130-4-2 | 衣類の試験方法 | |
IEC 61340-4-3 Ed.2 | JIS C 61340-4-3:2009 | 履物の試験方法 |
IEC 61340-4-4 Ed.3 | JIS C 61340-4-4:2015 | バルクコンテナの(安全)試験方法 |
IEC 61340-4-5 Ed.2 | JIS C 61340-4-4-5:2007 | 床と履物による静電気保護特性評価方法 |
IEC 61340-4-6 Ed.2 | JIS C 61340-4-6:2016 | 特定応用のための試験方法-リストストラップ |
IEC 61340-4-7 Ed.2 | JIS C 61340-4-7: 2011 | 特定応用のための試験方法-イオン化 |
IEC 61340-4-8 Ed.2 | JIS C 61340-4-8: 2014 | 特定応用のための試験方法-袋(バッグ) |
IEC 61340-4-9 Ed.2 | JIS C 61340-4-9:2018 | 特定応用のための試験方法-衣類 |
電気・電子機器等を製造するメーカーは、製品を生産する現場や、製品が実際に使用されるシーンを想定し、それぞれでESD規格を満たすことが求められます。
そのため製品を生産する現場においては、静電気放電を防ぐ対策に加えて、静電気をそもそも発生させない対策や、発生した静電気を帯電させない対策も必要となります。
具体的な対策としては、大地に逃がす(グランディング)、加湿器や噴霧機等で作業空間及び保管場所の湿度を高める、摩擦が起こらないようにゆっくり動作を行う、電位差があるものを近づけないようにする、イオナイザ(静電気除去機)を使用して中和させる等の方法があります。
また、実際に製品を使用するシーンを想定した対策では、試作品や使用環境を作って試験を繰り返すという方法の他に、電磁界解析ソフトウェアを用いてESDによって生じる電流や電界をシミュレーションし、破損や誤動作等が起こる可能性を評価するという方法があります。
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