CST Studio Suiteは立体・平面フィルタの設計に対して充実した機能を提供しています。今回はフィルタ設計ツールFilter Designer 3Dを詳しくご紹介します。
無線周波数資源の有効活用に向けて、高精度のバンドパス(通過帯域)フィルタは欠くことができない要素です。フィルタに求められる基本的な性能は、通過帯域での低損失、阻止帯域での高減衰量があります。プリント基板の平面回路で形成する平面フィルタは設計が比較的容易である一方で、立体回路によるフィルタに比べて上記の基本的性能は劣ります。設計者は温度変化による特性変化や大電力通過時の耐放電性能などといった要因も考慮しながら仕様を満足するフィルタを設計しなくてはなりません。
バンドパスフィルタは平面・立体を問わず、複数の共振器を連結させることで構成されます。共振器間の結合の強弱で帯域幅や通過損失などが変化します。最も基本的な構成は共振器の直列接続となりますが、急峻な帯域阻止性能を実現する場合は、共振器を直列要素以外にクロス結合させて帯域外に減衰極(Attenuation pole、またはTransmission zero)を設けます。
フィルタを構成する共振器間の結合を行列で表現(結合行列:Coupling Matrix)して各結合を調整する設計手法が登場し、クロス結合を含めた高度なフィルタ構成の合成やチューニングが可能となりました。上記4段のフィルタを例に結合行列を示します。共振器1-3間のクロス結合成分があることが判ります。
Filter Designer 3D(FD3D)はCST Studio Suiteのオプション機能で、結合行列を活用したフィルタの設計・最適化を支援します。周波数帯域、段数、通過帯域の反射量などの設計値を入力すると、特性を満足するフィルタの結合行列を瞬時に生成します。
設計したフィルタの解析結果、あるいは実測結果をインポートすると、理想的な結合行列との差分を示します。この機能によって、どの共振器間の結合を調整すればよいか明確に判るため、設計の最適化や実測でのチューニングを最短ルートで正解にたどり着くことが可能です。
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