2024年3月5日

EMC試験とは?概要や主な試験項目について解説

EMC試験とは?概要や主な試験項目について解説

電子機器や電子部品のような工業製品は、これらが発する電磁波の影響を考慮する必要があり、評価指標であるEMC規格(電磁適合性に関する規格)に準拠することを、EMC試験にて証明しなければなりません。

今回は、EMC試験とは何か、その基本的な内容や試験が必要な理由、試験項目等について解説します。 また後半では、電磁界解析ソフトウェアを活用したエミッション及びイミュニティの解析事例についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。

EMC試験とは

EMC試験とは簡単に言えば電磁ノイズに関する試験で、電子機器や電子部品等において、他の機器に干渉する電磁ノイズを出さない能力を評価するエミッション試験(EMI試験)と、他の電磁妨害からの免疫能力を評価するイミュニティ試験(EMS試験)で構成されます。

関連記事:エミッションとイミュニティの違いとは?関係性や対策の違いについて

エミッション試験(EMI試験)

エミッション試験(EMI試験)は、機器からの電磁ノイズが規格で定められた範囲内に収まっているかを評価する試験です。

電磁ノイズには、空間を経由して外部に伝わる放射ノイズ(輻射ノイズ)と、ケーブル等を伝播して伝わる伝導ノイズがあり、試験ではそれぞれのエミッションについて評価を行います。

エミッション試験(EMI試験)放射エミッション試験
伝導エミッション試験

イミュニティ試験(EMS試験)

イミュニティ試験(EMS試験)は、他の機器から受ける電磁ノイズによる誤動作等の起こりやすさを評価する試験です。エミッション試験と同じく、放射ノイズと伝導ノイズそれぞれに対して評価を実施します。

イミュニティ試験(EMS試験)放射イミュニティ試験
伝導イミュニティ試験

EMC試験の必要性

EMC試験の必要性

電気・電子機器を動作させるには電流を流す必要があり、その周辺には必ず電界や磁界が発生します。そして、他の機器に干渉する電磁波は電磁ノイズと呼ばれ、電磁ノイズによって電磁妨害を受けた機器は誤動作や機能障害等の影響を受ける可能性があります。

例えば過去には、携帯電話の使用によって医療機器が誤動作を起こしたり、エレベーターの制御回路のイミュニティが極めて低かったために死亡事故が発生した事例も報告されています。

さらに、電磁ノイズは電子機器や電子部品だけに留まらず、人体や環境に与える影響にも考慮しなければなりません。

このような電磁波に関わる様々な影響は「EMC問題」と呼ばれ、エレクトロニクス技術の発展及び普及に伴って、EMCに対する規制範囲は広まり、また強化されているのです。

関連記事:【EMC解説】ノイズとは?種類・影響・EMC対策について

EMC試験と規格について

EMC試験やノイズ対策といったEMCに関する具体的な取り組みが始まったのは1930年代頃で、以降、第二次世界大戦などの戦時下で繰り広げられた電子戦や、電気・電子機器の普及と技術の発展に伴って変化を続け、現代も急速な技術進化に適合するために適宜改正されています。

現在は国と地域でそれぞれの規格や法令を持つようになり、市場に応じた法令や規格に対する適合性が証明されなければ基本的に販売することができず、またルールに違反していれば罰則の対象となることがあります。

例えば日本では産業標準化法に基づいて制定された「日本産業規格(JIS)」や電気用品による危険及び障害発生の防止を目的とする「電気用品安全法」、ヨーロッパであれば加盟国内で販売する電子機器に対してEMCの保証を義務付ける「EMC指令」などが該当します。

主なEMC規格の例

国際規格IEC規格国際電気標準会議
CISPR国際無線障害特別委員会(IECの特別委員会)
国内規格・地域規格JIS規格 日本
RCJS規格日本
IEEEアメリカ合衆国
NVLAPアメリカ合衆国
EN規格EU(ヨーロッパ連合)

EMC試験の主な項目(EMI試験/EMS試験)

EMC試験の主な項目(EMI試験/EMS試験)

次に、代表的なEMC試験項目についてご紹介します。EMC試験では、電磁波測定器やEMC試験機と呼ばれる機器を使用し、ノイズレベルや外来ノイズに耐えられるレベルを測定します。

EMC試験は各法令や規格に準拠し、また法令や規格は年々改訂されるため、最新の情報を必ず確認してください。

【EMC試験】エミッション試験(EMI試験)の主な項目

エミッション試験(EMI試験)では、下記のような試験が実施されます。いずれの試験にしても、電子機器や電子部品が発する電磁ノイズの値が規格や法令で定められた基準を下回っていて、なおかつ他の機器に影響を与えないことが評価の基本となります。

  • 放射妨害波測定
  • 伝導妨害測定
  • 電源高調波測定
  • 電圧変動・フリッカー測定
  • 雑音電力測定

【EMC試験】イミュニティ試験(EMS試験)の主な項目

イミュニティ試験(EMS試験)では、下記のような試験が実施されます。エミッションは多くの国と地域で法的な規制が設けられているのに対し、イミュニティは製品そのものの品質に起因するとしてアメリカ合衆国等一部の国と地域では法的な規制を設けていないところもあります。

  • 静電気放電イミュニティ試験
  • 放射電磁界イミュニティ試験
  • 電気的ファストトランジェント/バーストイミュニティ試験
  • 雷サージ試験
  • RF伝導イミュニティ試験
  • 電源周波数磁界試験
  • 電圧ディップ・一時遮断イミュニティ試験

また、イミュニティ試験では放射ノイズの測定に周波数や測定対象等に応じたアンテナが使用されます。

アンテナの種類周波数帯
ダイポールアンテナ30MHz~1000MHz
バイコニカルアンテナ30MHz~300MHz
ログペリオディックアンテナ200MHz~1000MHz
ホーンアンテナ1GHz~
バイログアンテナ30MHz~1000MHz

EMC試験サイト(EMC試験所)について

EMC試験サイト(EMC試験所)について

EMC試験はEMC試験サイト(EMC試験所)と呼ばれる電磁波の影響を受けない特殊な環境で実施する必要があり、またEMC試験サイトは「オープンエリアテストサイト(OATS)」「シールドルーム」「電波暗室」の大きく3タイプに分けられ、用途によって使い分けられます。

EMC試験サイト①:オープンエリアテストサイト(OATS)

オープンエリアテストサイト(OATS)は、EMC試験の基準となる試験サイトです。その名の通り屋外の試験サイトで、雨風をしのぐために電磁波に影響を与えないFRP製の白いシェルターが設置されています。

オープンエリアテストサイトは外来ノイズの干渉を受ける可能性があるため、人里離れた山間に設けられており、主に放射エミッションの試験を行うために利用します。

EMC試験サイト②:シールドルーム

シールドルームは、外部からの電磁ノイズの侵入及び内部で発生した電磁ノイズの漏洩を遮断するための試験サイトです。隔絶した環境にするため、空間全体を金属パネルや導電性のある素材等で覆って電波を反射させます。

この特徴から、主に放射を伴わないイミュニティ試験や伝導エミッションの試験に使用され、また簡易的な試験サイトということもあり、試作段階の簡易的な評価を行う場として使うケースもあります。

EMC試験サイト③:電波暗室

電波暗室は、シールドルームに対して内部に電波吸収体を取り付け、電磁波の反射をなくした試験サイトとなっています。また、床を除く面全体に電波吸収体を取り付けた電波暗室を半無響室、床を含む面全体に取り付けた電波暗室を全無響室といいます。

半無響室は主に放射エミッションと放射イミュニティの試験で使用し、全無響室は放射イミュニティの試験で使用します。

「CST Studio Suite」で試作レスの開発を

今回はEMC試験について、その内容や試験が必要な理由、試験項目等をご紹介しました。

電磁ノイズは目に見えず、さらに予測しにくいことから、試作と実験を繰り返して評価する必要があり、それに伴って発生する材料費や人件費などの多大なコストが製品開発における重大な課題となっていました。

近年は電磁界シミュレーションの性能向上により、試作レスで精度の高い評価が得られるようになったため、コスト削減の他、開発リードタイムの短縮にも貢献しています。

本サイトでは「 CST Studio Suite」を使用したイミュニティ及びエミッションのシミュレーション事例を多数掲載していますので、ぜひ参考にご覧ください。

CST Studio Suiteは、あらゆる電磁界問題をカバーするOne Package Solutionとして、幅広い開発・研究分野で採用されているシミュレーションソフトウェアで、静電磁界のセンサーの計算からマイクロ波アンテナ、EMC対策、光デバイスの解析まで全てのソルバーが追加費用なしで利用できます。

さらに、使い勝手の良いユーザーインターフェイスで解析担当者の作業負担を軽減することにも貢献します。

現在使用されているシミュレーションソフトウェアにご不満がある方や、これからシミュレーションソフトウェアの導入を検討されている方は、電磁界解析ソフトウェア「CST Studio Suite」を検討されてみてはいかがでしょうか。

株式会社エーイーティーは、30年以上にわたる「 CST Studio Suite」の豊富な実績と経験に基づき、研究・開発業務の立ち上げから運用フローの構築まで、ユーザー様に対して多岐にわたるサポートを提供しています。

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電磁波技術のプロフェッショナル 株式会社エーイーティー

株式会社エーイーティーは、電磁波技術をコアとしたスタンフォード大学発のベンチャー企業として、1988年に誕生しました。

先端の解析ソフトウェア製品を中心に、誘電率測定装置をはじめ、小型プラズマ装置、人体電磁波ファントムなど付加価値の高いハードウェア製品をご提供し、また産官学連携プロジェクトを含む研究開発を通じてお客様のご要望にお応えしてまいりました。

当社の持つ高度な専門知識と技術力、幅広いネットワーク、そして独創的な発想力を武器に、価値あるソリューションをご提案致します。

CST Studio Suiteの導入に関するお困りごとやご質問等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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CST Studio Suiteは ダッソー・システムズの製品です。ダッソー・システムズについては

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CST Studio Suiteは ダッソー・システムズのシミュレーションソリューションブランド SIMULIAの製品です。

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