2024年4月8日

EMC指令とは?CEマーク・適用範囲・EMC試験について解説

EMC指令とは?CEマーク・適用範囲・EMC試験について解説

今回は、EMC指令とは何か、概要や適用範囲、EMC試験(適合性評価)についてご紹介します。CEマーク・UKCAマークの取得を予定している方や、一連の流れを把握されたいという方は、ぜひ参考にご覧ください。

EMC指令の基礎知識

はじめに、EMC指令の概要や要件、CEマーク、UKCAマークについて解説します。

EMC指令の概要

EMC指令とは、EU加盟国をはじめとする欧州経済地域(EEA)で適用されている電磁波干渉に関する指令です。危険や装置の障害を防ぐことを目的とした法的行為で、EEA内で電子・電気機器を販売する際は、EMC指令への適合と、CEマークまたはUKCAマークの添付が義務化されています。

つまり、CEマークまたはUKCAマークがなければ、EEA内で電子・電気製品を販売することができないのです。

またEMC指令はニューアプローチ方式に基づいており、製品の安全規格の詳細はEU指令に基づいたEU規格で定められています。

ニューアプローチ方式とオールドアプローチ方式

ニューアプローチ方式とは、簡単に言うと法律で製品の安全性に関する細かなルールは定めず、規格にて定めることを強制化する方式です。通常、法律を改正するには時間がかかりますが、規格であればスピーディーに改正できるという点にメリットがあり、EMCにおいてはEU規格にて詳細なルールが決められています。

またこれに対して、製品の安全について法律で規格の詳細まで決める方式をオールドアプローチ方式といいます。現在、日本の製品安全はこのオールドアプローチ方式が採用されており、特定の製品ごとに安全法規が制定されていますが、電気用品に関してはすでにニューアプローチ方式への移行が徐々に進んでいます。

EMC指令の基本的な要件

EMC指令では、電子機器が発する電磁波が他の機器に与える影響について基準値を超えないこと(EMI/Electromagnetic Interference)と、外部からの電磁波に対して適切な耐性を持つこと(EMS/Electromagnetic Susceptibility)を基本的な要件として、具体的な基準やテスト方法が規定されています。

関連記事:【EMC解説】ノイズとは?種類・影響・EMC対策について

関連記事:EMC・EMI・EMSの違いについて|基本知識や対策の相違点

CEマークとは

CEマーク(Conformité Européenne)とは、製品がEMC指令を含むEU指令に適合している旨を証明するもので、主にEU加盟国で対象の製品を販売する際はこのCEマークを必ず添付しなければなりません。また、CEマークを表示することをCEマーキングと呼んでいます。

UKCAマークとは

2020年1月31日にイギリスがEUから離脱した後、CEマークに代わる新しい適合性評価マークとして導入されたものがUKCAマークです。

CEマークと同様にEMC指令に関する評価も含まれ、英国市場で販売する製品は、必ずUKCAマークを表示しなければなりません。そして、UKCAマークを表示することをUKCAマーキングといいます。

なお、北アイルランドに関してはCEマーキングが引き続き採用されています。

EMC指令の適用範囲について

EMC指令の適用範囲について

次に、EMC指令の適用エリアと対象製品について見ていきましょう。

エリアに関する適用範囲

EMC指令の適用範囲はCEマーク及びUKCAマークの適用が義務付けられているEUの27の加盟国および欧州自由貿易連合(EFTA)諸国、EU加盟国候補のトルコ、そしてイギリスとなっています。※2024年1月現在

【EMC指令が適用されるエリア】
EU加盟国
アイルランド/イタリア/エストニア/オーストリア/オランダ/キプロス/ギリシャ/クロアチア/スウェーデン/スペイン/スロバキア/スロベニア/チェコ/デンマーク/ドイツ(加盟時西ドイツ)/ハンガリー/フィンランド/フランス/ブルガリア/ベルギー/ポーランド/ポルトガル/マルタ/ラトビア/リトアニア/ルーマニア/ルクセンブルク
EFTA加盟国
スイス/ノルウェー/アイスランド/リヒテンシュタイン
※スイスでは義務化されていないが、MRA相互承認協定によりCEマークが認められる。
その他
トルコ/イギリス(イングランド/ウェールズ/スコットランド)

なお、日本市場で販売する電子・電気機器はEMC指令への適合は義務付けられておらず、日本独自のルールであるJIS規格やVCCI規格、RCJS規格、電気用品安全法への適合が求められます。

ただし、CEマーク及びUKCAマーク対象国への輸出を検討しているのであれば、日本国内の法令や規格を守ることに加えて、EMC指令への適合も必要となります。

参考:EU加盟国|外務省 EU関連用語集|外務省

製品に関する適用範囲

EMC指令が適用される製品は「Equipment」と定義付けされています。Equipmentとは装置や機器などの電子的な製品を包括する用語ですから、簡単に言うと、電気を使用するもの全般が対象となります。

また、例えば部品Aと部品BのそれぞれでEMC指令への適合が評価されていても、部品Aと部品Bを使った製品が自動的にEMC指令に適合することはなく、完成品そのものを単一の機器として見なし、改めて適合への証明が必要です。

EMC指令におけるEMC評価と認証機関

EMC指令におけるEMC評価と認証機関

国やエリアにかかわらず、電子・電気機器を販売する際、メーカーは市場に応じたEMC評価を行うのが通常です。

EMC指令におけるEMC評価(適合性評価)については、自社で評価する「自己宣言」という方法と、認証機関で認証を受ける方法があり、どちらで評価するかは各指令原文にて指定されているため、製品に応じた方法を採用しなければなりません。

また適合性評価の手順は「評価モジュール」と表現され、モジュールAからモジュールHまで定められています。そして、モジュールAを使用したEMC評価のみ自己宣言が認められており、それ以外のモジュールB〜Hは認証機関にて評価される必要があります。

EMC指令の適合性評価手順

EMC指令の適合性評価は、大まかに下記の流れで実施します。

  • 整合規格の選定
  • EMC評価の実施
  • EMCテストレポートの作成
  • 技術文書(TD)の作成
  • EU適合宣言書(DoC)の作成
  • CEマーキング/UKCAマーキング

技術文書(TD/Technical Documentation)とは、EMC指令への適合性を提示する文書一式のことで、決まった形式はなく、メーカーが独自で内容を作成します。CEマーキング・UKCAマーキングをする場合、技術文書(TD)の作成は義務となっており、当局から要求があった際は速やかに提出する必要があります。

また、EU適合宣言書(DoC/Declaration of Conformity)とは、適合性を表明するための文書一式のことで、技術文書(TD)と同じく、CEマーク・UKCAマークを取得する際は必ず作成しなくてはなりません。

なお、OEMにて製品を製造する場合は、技術文書(TD)とEU適合宣言書(DoC)の作成は、OEMメーカーではなく、出荷・販売するメーカーが行うことになっています。

参考:CEマーキング技術文書の作成の手引き|経済産業省

自社での評価(自己宣言)について

モジュールA対象品の場合、メーカー自身でEMC指令への適合を証明することができます。

自己宣言だからといってEMC指令や規格に則った評価を実施せずにCEマーキング及びUKCAマーキングをした場合、義務に違反したということになるため刑事罰の対象となりますし、またモジュールA対象品だからといってこれらのマーキングが任意になることはなく、対象エリア内で販売する際は必ず添付することが求められますので、責任を果たすようにしましょう。

認証機関での評価について

自己宣言可能なモジュールA以外の製品は、よりリスクの高い製品として、欧州委員会から認定を受けた認証機関(NB/Notified Body)にて適合性評価を受けなければなりません。また外部に委託するため、自己宣言より時間と費用を要するのが通常です。

ちなみに、モジュールA対象品でも認証機関にて審査を受けることができます。

EMC指令に準拠するためのEMC対策

EMC対策の基本は、「加害者にならない対策(EMI対策/エミッション対策)」と「被害者にならない対策(EMS対策/イミュニティ対策)」を施すこと、そして設計段階からEMC対策について考慮することです。

EMI対策では、不要な電磁ノイズそのものの発生を抑制するための対策と、発生した電磁ノイズが外部に伝わらないようにするための対策を実施します。具体的には、グランディングやフィルター、シールドなどになります。

対してEMS対策では、主に外部からの電磁ノイズを受けないための対策と、電磁ノイズを受けた場合、その影響を最小限に抑えるための対策が取られます。エミッションと同じく不要なノイズを抑制するフィルタ対策の他に、電磁ノイズを逃すための経路を作る方法(バイパス)や、電磁ノイズを吸収する方法、高インピーダンスで電磁ノイズを反射させる方法などが採用されます。

関連記事:EMI対策とは何か?電磁ノイズの基礎知識から対策手法について

EMCシミュレーションでコストの削減へ

EMCシミュレーションでコストの削減へ

今回は、EMC指令についてご紹介しました。

電磁ノイズは目に見えず、さらに予測しにくいことから、試作と実験を繰り返して評価する必要があり、それに伴って発生する材料費や人件費などの多大なコストが製品開発における重大な課題となっていました。

近年はEMCシミュレーションの性能向上により、試作レスで精度の高い評価が得られるようになったため、コスト削減の他、開発リードタイムの短縮にも貢献しています。

本サイトでは「 CST Studio Suite」を使用したEMCシミュレーション事例や技術トピックスなどを掲載していますので、ぜひ参考にご覧ください。

CST Studio Suiteは、あらゆる電磁界問題をカバーするOne Package Solutionとして、幅広い開発・研究分野で採用されているシミュレーションソフトウェアで、静電磁界のセンサーの計算からマイクロ波アンテナ、EMC対策、光デバイスの解析まで全てのソルバーが追加費用なしで利用できます。

さらに、使い勝手の良いユーザーインターフェイスで解析担当者の作業負担を軽減することにも貢献します。

現在使用されているシミュレーションソフトウェアにご不満がある方や、これからシミュレーションソフトウェアの導入を検討されている方は、電磁界解析ソフトウェア「CST Studio Suite」を検討されてみてはいかがでしょうか。

株式会社エーイーティーは、30年以上にわたる「 CST Studio Suite」の豊富な実績と経験に基づき、研究・開発業務の立ち上げから運用フローの構築まで、ユーザー様に対して多岐にわたるサポートを提供しています。

導入をご検討中の方に向けて、30日間無料トライアルや簡易版ライセンスのご案内、セミナー動画やイベントを随時開催していますので、お気軽にご利用ください。

電磁波技術のプロフェッショナル 株式会社エーイーティー

株式会社エーイーティーは、電磁波技術をコアとしたスタンフォード大学発のベンチャー企業として、1988年に誕生しました。

先端の解析ソフトウェア製品を中心に、誘電率測定装置をはじめ、小型プラズマ装置、人体電磁波ファントムなど付加価値の高いハードウェア製品をご提供し、また産官学連携プロジェクトを含む研究開発を通じてお客様のご要望にお応えしてまいりました。

当社の持つ高度な専門知識と技術力、幅広いネットワーク、そして独創的な発想力を武器に、価値あるソリューションをご提案致します。

CST Studio Suiteの導入に関するお困りごとやご質問等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

メール、お電話でのお問合せ

お電話でも承ります。お気軽にご連絡ください。

TEL044-980-0505

平日 09:00~18:00

会社名
株式会社エーイーティー
所在地
〒215-0033
神奈川県川崎市麻生区栗木2丁目7番6号
TEL:044-980-0505(代表)
CST Studio Suiteは ダッソー・システムズの製品です。ダッソー・システムズについては

ダッソー・システムズ株式会社はフランスに本社を置くソフトウェア開発企業です。
CAD CAM PDM PLM シミュレーションを始めとする卓越した3DEXPERIENCEを通じてお客様の3次元設計・エンジニアリング・3次元CAD・モデリング・シミュレーション・データ管理・工程管理を強力に支援します。

CST Studio Suiteは ダッソー・システムズのシミュレーションソリューションブランド SIMULIAの製品です。

 sample