2021年12月20日
#EMC

モデルリダクションを適用した効率的なBCI試験シミュレーション

今回のトピックスではBCI試験を解析テーマとして採用し、複雑な解析を効率的に対処するモデルリダクションの適用方法についてご紹介します。

BCI試験

BCI(Bulk Current Injection;バルク電流注入)試験は電子機器のイミュニティ試験の1つとして、ISO 11452-41などとして規定されています。 ノイズの印可は機器に接続されるワイヤハーネスにクランプ(BCIプローブ)を経由して電流を注入する方式です。 試験の結果、正常動作に支障が発生した場合、問題の特定と改善策を効率的に検討するためにCST Studio suiteを活用したシミュレーションが役立ちます。

BCI試験の典型例
BCI試験の典型例
効率的に解析するためのモデルリダクション

BCIシミュレーションを通して原因の究明や改善案として注目したい箇所は試験対象である基板になります。 基板の配線パターンや層構成などの物理寸法と、ワイヤハーネスやBCIプローブを含むノイズの導入経路の大きさに開きがあり、 試験系全体を3Dモデルとして扱うと解析負荷が大きくなることが容易に想像できます。 基板のパターン変更や実装部品の追加・変更など、シミュレーション上で試行錯誤を行うことを考えると、1回あたりの解析負荷を極力抑えたいところです。 そこで、再利用可能で物理的寸法が大きいノイズの導入経路部分を応答関数としてモデルリダクションする方法を取り組みました。

BCIプローブのモデリング

まず、BCIプローブのクランプ部品を実際に合うようにモデル化を行いました。 クランプ内の構造やフェライト材料などについては、得られる情報の範囲で具体的にモデルを作成したうえで実測との比較で各パラメータを合わせこむ作業を行います。 単線のワイヤを用いた実測のセットアップを用いた合わせ込みに取り組んでいる研究[1]を参考に実施しました。

[1] F. Grassi et al, “Circuit Modeling of injection Probes for Bulk Current injection”, Electromagnetic Compatibility IEEE Transactions on, Vol. 49, Issue 3, 2007

BCIプローブの解析モデル化
BCIプローブの解析モデル化
BCIプローブの解析モデル検証用セットアップ
BCIプローブの解析モデル検証用セットアップ

印可対象の単線の入出力にポート1,2、BCIプローブの入力にポート3を設定し、3ポートのS-Parameterを計算し、実測に合うように各設定を調整しました。

BCIプローブとワイヤハーネスの解析

次のステップとして、上記の設定で得られたBCIプローブを今回の解析例で使用する平行2線ワイヤと組み合わせて注入されるノイズがワイヤに誘導される部分の解析を行います。

平行2線のワイヤハーネスとBCIプローブの解析モデル
平行2線のワイヤハーネスとBCIプローブの解析モデル

今回はノイズを印可するケーブルとして電源ラインを想定しており、シンプルな平行2線のワイヤハーネスでしたので、3Dモデルで作成しました。 高速信号伝送向けのツイストペアや編組シールドを含む複雑なケーブルを印可対象とする場合は、CABLE Studioを活用することも可能です。

Port設定とS-Parameter
Port設定とS-Parameter

ワイヤハーネス両端にPortを設定(1~4)、BCIプローブの入力としてPort5を設定して400MHzまで計算して得られたS-ParameterをTouchStoneファイルとして出力します。 BCIプローブから印可される信号がワイヤハーネスに誘導される周波数特性をTouchStoneファイルで置換し、基板の解析モデルと回路接続します。 このアプローチを採ることで基板周りの3D電磁界解析を効率よく実施することが可能となります。

ECU基板のモデリング

ECU基板の設計データから3次元モデルを作成する際はEDA Import機能を活用します。 層構成やネット情報に加え、表面実装素子についても配置した状態で3次元モデル化出来ます。 今回の解析では電源ラインにノイズが印可されることで、ECU基板内のCANドライバーに動作支障が発生した状況を想定します。 電源供給のワイヤハーネスが基板に接続される箇所と基板に実装されているチップ(メインコントローラ)のCAN送受信端子にPortを設定します。

EDA Import設定ダイアログ(左)と基板の3次元モデル
EDA Import設定ダイアログ(左)と基板の3次元モデル
ECU基板とPort設定
ECU基板とPort設定
Nextシステム全体の接続、解析結果のご紹介
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