無線端末の製品開発において、FCC(米国連邦通信委員会)を代表とする各国の無線通信に関する規制への適合認証は必須であり、ミリ波帯を活用する5Gにおいては、従来の実測に加えてシミュレーション結果の提出も求められます。 CST Studio Suiteバージョン2021で新たに搭載された5Gミリ波モジュール搭載機の重要な性能指標:EIRPのCDFプロット及びsPD算出機能を詳しくご紹介します。
5Gが利用する周波数バンドのうちFR2(Frequency Range2;24.25GHz~52.6GHz)では端末側においてもカバレッジを確保する目的でアンテナアレイによるビームフォーミングが導入されています。 端末の送信電力性能の指標としては、TRP(Total Radiated Power:全放射電力)に加え、 端末を中心とした全方位にビームスキャンしたときの各方位におけるEIRP(Equivalent Isotropic Radiation Power:等価的等方放射電力)の累積分布(CDF:Cumulative Distribution Function)が規定されています。 例えばCDF=30%、つまり全球面空間上の70%において最低担保されるべき送信電力(Spherical coverage)が10dBm、などのような評価に用いられます。
6GHz以下の周波数では単位質量当たりの電力損失量としてSAR(Specific Absorption Rate)による評価をおこなっておりますが、 6GHz以上の周波数では体表面の単位面積当たりを通過する電力量としてsPD(Spatial average Power Density)で評価します。 これは、波長短縮効果により体表面で大きく減衰する特性を持つミリ波帯においてはSARでの評価が適当ではなくなることが背景にあります。 6GHzから30GHzまでは4cm^2あたり、30GHzから300GHzまでは1cm^2あたりと単位面積が規定されています。
CSTでは5Gミリ波アンテナアレイを解析した後のポスト処理機能として、ビームスキャンした放射パターン出力からEIRPのCDFプロット作成とsPDの算出を行う専用メニューが追加されました。 Wizard形式での設定入力を行うだけで複雑な処理工程が自動化され、他のツールに頼ることなく必要な結果が得られます。 ビームスキャンに対するアレイアンテナの給電についてはCode Bookと呼ぶファイルを介して設定する方式が採られており、AIP(アンテナインパッケージ)のモジュールベンダーよりCode Bookを取得してスキャン条件を設定することが可能です。 AIPの解析モデルも暗号化モデルとしてベンダーより入手可能な仕組みも整備されています。
アレイアンテナモジュールを搭載するスマートフォンサンプルモデルでご説明します。 こちらのサンプルには2×2のアンテナアレイ、4×1のアンテナアレイのモジュールがそれぞれ2つ搭載されています。 アンテナはパッチアンテナであり、各アンテナに給電ポートが設定されています。(全16ポート)フルポートの解析を終えたのちに5G Wizardを立ち上げます。 設定項目は周波数選択、Code Bookの指定、sPDの領域設定などです。
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