2023年12月27日
#製品機能 #アンテナ

CSTとIsightの連携による設計空間探索

本技術トピックスでは、実験計画法による効率的なアンテナ設計の実施例をご紹介します。

設計空間探索とは

シミュレーションで製品開発や新しい研究をされる際、多くの設計パラメータがあると、無数の組み合わせの中から妥当な解を見つけることに非常に手間がかかるとお感じになることはありますでしょうか。 パラメータを何度も変えながら ”効きそうな” パラメータを特定したり、おおよその見当をつけたりするための試行錯誤は時間もかかりますし、少ない回数で済ませるには経験が必要になります。 設計空間探索とは、多くのパラメータからなる設計空間に対して様々な組み合わせを探索することにより、傾向や相関性の把握を通して効率的により良い設計パラメータを見つける作業を指します。 CSTと同じダッソー・システムズ社製品であるIsightは、設計空間探索と最適化機能、ワークフローの定型化などを行えるソフトウェアです。

Isight

Isightの歴史は古く、1980年代初頭にGeneral Electric社で誕生したEngineousという複合領域最適化システム構築プロジェクトに由来します。 そこでIsightの原型が開発され、航空機エンジンなどの多くの製品設計でサイクルタイム、製造コストの削減、品質・信頼性の向上に貢献してきました。 その後IsightはEngineous Software社製品となり、2008年にダッソー・システムズ社に買収され、今日に至っています。 Isightは様々なCAD、CAEソフトウェア、Excelなどの表計算ツールやプログラムを連携させたワークフローを構築し、設計空間探索や最適化処理と言った高度なプロセスを自動化する機能を提供します。

Isightの詳しい製品概要は別ページをご参照ください。
CST Studio Suiteとの連携

それではCSTとIsightを連携した例をご紹介いたします。CSTの最適化・パラメータスイープを超えた機能を体感することができます。

CST × Isight 連携のメリット CST × Isight 連携のメリット
CST × Isight 連携のメリット

下図が今回のワークフローになります。 アンテナ作成の手間を省くため、Antenna Magus (アンテナ設計ツール) のデュアルバンドアンテナモデルをCSTに取り込みました。 設計パラメータが変数としてCSTにインポートされますので、Isightとも相性が抜群です。 もちろん必須のソフトではありませんので、お持ちでなくとも構いません。 次に、CSTで主にポストプロセスの設定をします。 これは、Isightに結果を読み込ませるために、評価する値を出力する必要があるためです。 その後、IsightでCSTファイルを読み込み、実験計画法や最適化などのコンポーネントで入出力を指定して、解析を実行してデータ分析するという流れになります。

連携のワークフロー
連携のワークフロー

デュアルバンドアンテナモデル
デュアルバンドアンテナモデル デュアルバンドアンテナモデル
デュアルバンドアンテナモデル

ここで少し実験計画法 (Design of Experiments : DOE) のご紹介をいたします。 DOEは設計空間探索の手法の1つで、設計変数が製品の特性に与える影響のランク付けや因子間の相関を、少ない実験回数で効率的に評価できます。 イメージは、こちらの左図のように格子上の全ての因子の組み合わせを網羅的に解析するのではなく、直交性に基づいた効率的なサンプリングで右図のようにその傾向を掴むことができます。 このサンプリングの仕方が大きな特徴になります。

実験計画法のイメージ
実験計画法のイメージ

話は戻りまして、CSTでのセットアップを詳しく見ていきます。 重要なポイントは、出力パラメータをポストプロセスの0D Resultで定義するところです。 デュアルバンドアンテナということで、そのSパラメータは左グラフのように2つの共振点を持ちます。 評価指標となる共振周波数・帯域幅・放射効率の抽出は、右のようなポストプロセスで行います。 CSTでの事前準備はこれだけです。

デュアルバンドアンテナのSパラメータとポストプロセスの設定例
デュアルバンドアンテナのSパラメータとポストプロセスの設定例
デュアルバンドアンテナのSパラメータとポストプロセスの設定例

続いてIsightを起動します。 IsightのGUIは、フローの構築や解析設定を行う ”Isight Design Gateway” と、進捗状況や結果を確認する ”Isight Runtime Gateway” の2大要素で構成されます。 最初にIsight Design Gatewayを立ち上げ、ドラッグ&ドロップの簡単な操作でCSTを含めたDOEのフローを構築します。

コンポーネントを配置してフローを構築
コンポーネントを配置してフローを構築

参照するCSTファイルを指定すると、上記で設定しておいた入出力パラメータがIsightに読み込まれます。 その後、DOEのコンポーネントでパラメータの使用の有無、制約条件などを必要に応じて設定します。

CST および DOE コンポーネントのパラメータ設定
CST および DOE コンポーネントのパラメータ設定

最後にDOEの手法を選択します。 今回はラテン超方格実験 (設計空間から均一にサンプリングできるメジャーな手法) で分析しました。 設定画面に長所や短所などの特徴が書かれているため、どれを選んで良いか分からないといった際に非常に役立ちます。 実験回数 (CSTのシミュレーション回数) を150回とすると、150パターンの計画行列 (lengthやwidthの組み合わせ) が自動的に作成されます。 これらは適当な組み合わせというわけではなく、少ない回数で特性を把握できるような効率的なサンプリングになっています。 このモデルでは1回のシミュレーションが30秒ほどですので、150回で1時間ちょっとの時間で解析が完了しました。

DOE の手法選択と生成された計画行列
DOE の手法選択と生成された計画行列

NextIsightによるデータ分析と最適化
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会社名
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