アップルが2022年秋にリリースしたスマートフォンiPhone14では、Web上に公開されている情報(FCC認証レポート)からシミュレーションにCSTが採用されていることが確認できます。 本トピックスでは、内容の詳細とCSTが採用された背景について考察しました。
スマートフォンに代表される通信機器は各国の通信認証機関による認証が必要になっており、アメリカでは米国連邦通信委員会(FCC)が認証機関です。
各メーカーが提出した認証レポートはWeb上で公開されています。
例えばアップル社が提出したFCCレポート一覧は以下のURLから確認することが出来ます。
https://fcc.report/company/Apple-Inc
FCCレポートは数多くのドキュメントから構成されており、CSTが使用されていることが明記されているドキュメントは“RF Exposure Info”というタイプの文書の1つです。 電波を発する機器からの電磁波暴露(RF Exposure)の規制として、6GHz以下の周波数範囲ではSAR(Specific Absorption Rate)があり、実測またはシミュレーションによる評価が行われています。 一方の5Gのミリ波帯ではSARの代わりに単位面積当たりの入射電力密度sPD(spacial Power Density)を指標として評価するように定められています。 6GHz以上の周波数ではRF暴露による人体のエネルギー吸収は、体表面組織において支配的になることが背景になります。 FCCではこれらを最大許容暴露量MPE(Maximum Permissible Exposure)と表現し、規制値以下とすることを定めています。
入射電力密度は、スマートフォンを囲う立方体の6面を評価面とします。 評価は実測も行いますが、シミュレーションが多くの割合を占めます。 アンテナアレイを動的に制御してビームフォーミングを行う5Gのミリ波帯では、アンテナ励振の組み合わせが多いことから、全ての条件下での測定による検証には効率的ではなく、 実測との相関を確保しながらシミュレーションを活用することが必須となっています。
アップルが5G通信に対応したのは iPhone12からであり、5GモデムチップセットにQualcomm社製品を採用していることはよく知られています。 iPhone14になってアップル社が5Gミリ波のRF暴露解析にCSTを採用した背景を考察する際のヒントは、レポート内にも記載のあるQualcomm社による新しい設計ガイドラインではないかと思われます。
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