2021年11月8日
#荷電粒子

荷電粒子運動解析のためのソルバーとその選択

3次元の荷電粒子運動解析はCST Studio Suiteが得意とする計算対象の一つです。ここではそのための4つのソルバーの特徴とソルバー選択のための考え方を紹介します。

CST Studio suiteと荷電粒子運動解析

CST Studio suiteにおける荷電粒子運動解析の歴史は長く、高エネルギー加速器の開発を背景としていた前身ソフトウェアMAFIAを引き継ぎ、その後さらに多くの機能が強化されてきました。 このため、荷電粒子の運動が関係する装置や現象を幅広くシミュレーションをすることが可能です。 以前の技術トピックス「CSTソルバーを全て紹介します!」でも紹介しました通り、現在ではTrkソルバー、PICソルバー、Es-PICソルバー、そしてWAKソルバーの四つのソルバーがあります。 また、荷電粒子の運動は電磁場と密接にかかわっており、高周波や低周波、静電磁界のためのソルバーも重要です。

CST Studio suiteにおける荷電粒子運動解析ソルバー
CST Studio suiteにおける荷電粒子運動解析ソルバー
定常的な荷電粒子ビームのためのTrkソルバー

Trkソルバー(Tracking Solver)は、基本的には静電場や静磁場中の荷電粒子の軌道を計算するソルバーです。 繰り返し計算によって空間電荷を考慮するので大電流ビームも適切に取り扱うことができます。 また、電流が大きくビームエネルギーが非常に高い場合はビーム自身によって生じる自己磁場が現れ、それによってビーム集束効果が現れますが、この効果も同様のループによって考慮することができます。

過渡現象や荷電粒子-電磁波間の相互作用現象のためのPICソルバー

荷電粒子の過渡的な現象や電磁波との相互作用のような動的なシミュレーションを行うには、PICソルバー(Particle-in-Cell Solver)を使用することを検討してください。 このソルバーはParticle in Cellアルゴリズムを使っており、空間電荷を考慮した荷電粒子の過渡運動をセルフコンシステントに計算します。 このアルゴリズムは一般によく知られていますが、大まかにいうと各時間ステップで粒子の運動方程式とMaxwell方程式と結合させて計算する手法となります。 これによりマイクロ波や短パルスなど任意の電磁場の時間変化に対する粒子運動をシミュレーションすることができます。

PICソルバーのParticle in Cellアルゴリズム
PICソルバーのParticle in Cellアルゴリズム
過渡解析でも低速問題はEs-PICソルバー

過渡解析ではPICソルバーが有力になりますが、Maxwell方程式を解いている関係から安定な計算にはCourant-Friedrichs-Lewy条件(単にCourant条件とも呼ばれる)を満たす必要があります。 この条件によって必要な計算の時間ステップ幅は通常かなり細かくなります。 そのため時間スケールの長い現象をシミュレーションしようとすると計算リソースが膨大になり、実行が非現実的になります。 この条件で要求されるほどの細かい時間ステップが必要ではない場合は、Es-PICソルバー(Electrostatic PIC Solver)の使用を検討することになります。 Es-PICソルバーでもPICソルバーと同様にParticle-in-Cellアルゴリズムを使いますが、Maxwell方程式ではなくPoisson方程式で電場を解き、時間ステップごとに荷電粒子の運動と電場を計算します。 この場合はCourant-Friedrichs-Lewy条件を満たす必要はありませんが、PICソルバーと異なり高周波の電磁場効果を無視することになりますので注意してください。

Es-PICソルバーのParticle in Cellアルゴリズム
Es-PICソルバーのParticle in Cellアルゴリズム
ウエイク場を解析するWAKソルバー

WAKソルバー(Wakefield Solver)はウエイク場と呼ぶ電磁場を計算するソルバーです。 直線パスを通るバンチビームを励起源とする特殊な時間領域ソルバーで、粒子の動きへの電磁場のフィードバックはありません。 与えられた構造をバンチビームが通過することで励起した電磁場から自動的にウエイクポテンシャルやウエイクインピーダンス、ロスファクター、キックファクターを算出します。

以上ご案内した通り、CSTでは荷電粒子解析に向けて特徴が異なる4つのソルバーをラインナップしており、全て標準ライセンスでご利用頂けます。 次に、実際の様々な荷電粒子アプリケーションに対してどのソルバーを活用するべきか、考え方をご案内します。

Next荷電粒子アプリケーションに対するソルバー選択の考え方
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