同軸共振器法
平坦な面を有するサンプルであれば、共振器の上に置くだけで非破壊の誘電率測定ができます。
この画期的な測定方法は、共振器上部の開口部から漏えいするエバネッセント波と呼ばれる近接場を用いる独自の技術によって実現しました。
測定前のサンプル加工が不要なので、手軽に誘電率測定を行うことができます。
特 長
- エバネッセント波を用いた開放型同軸共振器による測定
- 共振器上部に小径の開口部があり、そこからはみ出るわずかな近接場(エバネッセント波)が測定サンプルに浸潤し、共振器全体の共振周波数、Q値がサンプルの複素誘電率に応じて変化します。その変化量から誘電率を算出します。
- 非破壊で簡単な測定作業
- 開放型共振器であるため、様々な形状のサンプルが測定できます。サンプルを共振器の上に置くだけで短時間に測定できます。
- 安定した測定
- 測定設置部に真空吸着機構を設けることで、測定面に常に安定した接触状態を維持できます。
用 途
以下のようなサンプルの測定に適しています。
- 携帯端末の筐体部品
- 多ピンコネクタのモールド樹脂
- 各種素材開発品
仕 様
測定周波数 (1つの共振器 で 5点 ) |
Type A | 0.8 / 2.45 / 4.2 / 5.8 / 7.6GHz |
Type B | 1 / 3.1 / 5.2 / 7.3 / 9.4GHz |
Type C | 2 / 6.1 / 10.2 / 14.3 / 18.4GHz |
測定範囲 |
比誘電率(Dk):1~15 誘電正接(Df/tanδ):0.1~0.001 |
測定精度 |
比誘電率(Dk):±1% 誘電正接(Df/tanδ):±5% |
サンプル形状 |
厚さ0.5mm 以上、10mm×10mm 以上の平坦・平滑な面が必要 |
本測定装置は、東京大学大学院総合文化研究科 前田研究室との産学協同開発として、川崎市より認定された事業の成果です。(特許番号3691812)
本測定システムの測定原理に関する論文がIEEE Microwave Theory And Techniques論文誌に発表されました。
R. Inoue, et al., "Data Analysis of the Extraction of Dielectric Properties
From Insulating Substrates Utilizing the Evanescent Perturbation Method",
IEEE Trans. Microwave Theory Tech., vol. 54,no. 2, pp. 522-532, Feb. 2006.
エバネッセント波による測定
共振器上部の小さな開口部から漏えいするエバネッセント波と呼ばれる近接場が測定サンプルに浸潤することで
測定サンプルの誘電率特性によって共振特性が変化します。
測定サンプルの表面近傍の局所的な領域の誘電率特性を測定します。
※ 測定対象は均一組成である必要があります。
プリント基板のような層構成の素材や複合材料の場合、表層に存在する物質の誘電率特性が測定結果に反映されます。
専用ソフトウェアによる簡単操作
測定ウィザード画面に沿って作業することで簡単に測定できるように設計されています。
装置の概要について
Q3. 「同軸共振器型の誘電率測定装置」は、従来の測定法とどこが違うのですか?
A3.
「同軸共振器型の誘電率測定装置」が従来の測定装置と大きく異なる点は、その使いやすさにあります。平坦な面が一つでもあれば、どのような形状の材料でも測定することができる、ユニークな測定プローブを採用しています。また、弊社独自開発のソフトウェアも付属されています。
使用方法は、プローブの上面にサンプルを置き、ソフトウェアのウィザードに従って画面をクリックするだけで、複雑な誘電率と誘電損失が簡単に測定できます。
Q4. 測定治具は何ですか?またその治具の特長と、測定できる対象物はどのようなものですか?
A4.
測定治具には同軸共振器と呼ばれる「測定プローブ」を採用しています(特許取得第3691812号)。1つの測定プローブは5ポイントの共振周波数を有し、複数の周波数ポイントの選択、および同時測定を可能にします。測定プローブには3種類あり、タイプにより測定周波数ポイントが決まっています。
タイプ1: 0.8⁄2.45⁄4.2⁄5.8⁄7.6GHz タイプ2:1⁄3⁄5⁄7⁄9GHz
タイプ3: 2⁄6⁄10⁄14⁄18GHz
Select Modeで2ポイントの周波数を選択
Select Modeで5ポイントの周波数を選択し、同時測定した結果例
本測定プローブによる測定は、サンプルの加工を必要としない非破壊測定が可能です。
測定対象は主にプラスティック、セラミックス、各種樹脂、液晶ポリマー、コネクタ、ガラスなどですが、様々なお問い合わせをいただいております。
※動画
「3.同軸共振器」をご参照下さい。
Q5. 「同軸共振器型誘電率測定装置」の測定原理とはどのようなものですか?
A5.
測定プローブの上面にサンプルが設置されると、測定プローブの先端から電界が漏れ(エバネッセント波)、サンプルに浸潤します。電界はサンプルの誘電率特性(複素誘電率)に応じて変化するので、共振器全体の共振特性(共振周波数、Q値)も変化します。共振特性の相対的な変化から誘電率、tanδを算出するという方法です。
※動画「3.同軸共振器」をご参照下さい。
Q6. 測定の精度はどのくらいですか?また高精度な測定値を得るための重要なポイントは何ですか?
A6.
比誘電率の誤差は、±1%です。またtanδの誤差は、±5%です。基準材料で校正することで精度を確実なものにしています。
基準材料としては、2種類の異なる材料を用いています。
基準材料とサンプルの測定結果における相対的な差を計算することで、周囲環境(例:温度、湿度、振動など)によって生じる誤差の原因を排除します。
高精度な測定値を得るための重要なポイントは、プローブの表面にサンプルがしっかりと接触していることです。わずかな隙間でもあれば、得られた測定値は変わってきます。
本装置ではサンプルを設置するプローブの上部に真空吸着機構が設けられており、測定面は常に安定した接着状態が保たれています。
※動画「1.AETの誘電率測定法」をご参照下さい。
サンプルの測定について
Q1. サンプルの条件はどのようなものですか?
A1.
同サンプルの条件としては、平坦で滑らかな面が少なくとも一つ必要なだけです。平坦な面積は、10mmX10mm以上、厚みは0.5mm以上あれば、サンプル全体の形状は任意です。薄膜を測定する場合は、0.5mm以上の厚さにするために薄膜を重ねて測定します。
Q3. 測定できる誘電率の特性に限界がある理由は何ですか?
A3.
比誘電率が高い材料にはエバネッセント波が深く浸透しないため、高い誘電率を精度よく測定することは困難になります。また、誘電正接が0.001以下の超低損失な材料の測定が難しい理由は、エバネッセント波の放射損と同軸の導体損のため、従来の空洞共振器に比べてQ0値が低い特性になってしまうからです。
このような高誘電性や超低損失性材料の測定には別タイプの空洞共振器型誘電率測定装置をお薦めします。
装置のオプションについて
Q1. 基準材料にはどのようなものを使っていますか?
A1.
測定基準となる材料には、既知の誘電率特性を持つ、2種類の異なった材料を用いています。これらの基準材料で測定パラメータを校正することで、定量的精度が得られています。基準材料としては、SiO2(二酸化ケイ素)とMgO(酸化マグネシウム)の2種類の単結晶を用いています。